白斑(尋常性白斑)は本当に治らない?原因と治療方法を解説します。

白斑(はくはん)は痛みやかゆみを伴わず、自覚症状がないため、気がついていない方や治療せずに放置している方もいらっしゃいます。
放置をしてしまうことで顔や手など人目につきやすい部位に発症したり、白斑が大きくなっていくことで急いで治療を始める方が多いです。
しかし、治療を開始してもすぐには効果が得られないというケースが多い実状があります。
この記事では、なかなか治らない白斑について、原因と治療法を解説していきます。
白斑(尋常性白斑)とは?
白斑(はくはん)とは、皮膚の色が白くなる病気で、「色素異常症」と言う疾患に分類されます。
完全に白くなる場合と、部分的に皮膚の色が薄くなってしまう場合に分けられます。
尋常性白斑(じんじょうせいはくはん)とも呼ばれており、「尋常性(じんじょうせい)」は皮膚の病気でよく使用される言葉で、「普通の」や「よくある」という意味で使用されます。そのため、「尋常性白斑」は「普通の白斑」という意味になります。
また、高齢者の方に発生する白斑は「老人性白斑」と呼ばれます。
白斑(尋常性白斑)の原因は?
白斑の原因はメラノサイトのはたらきが弱まってしまうことです。皮膚の色素を生成するメラノサイトの活性が失われることで、皮膚の色素が薄くなり皮膚の色が白く抜けてしまいます。
メラノサイトの活性が失われる原因は完全には解明されておらず、現段階では仮説に留まっています。
年齢を重ねること自体がひとつの原因として推察されていたり、自己免疫の作用(自分の体の中の抗体が、自分のメラノサイトを攻撃してしまい活性が失われる)とも推察されています。
また、遺伝についても白斑になある明らかな遺伝子はわかっておらず、必ずしも遺伝する疾患かどうかは分かっていません。ただ、患者の20~30%は家族にも尋常性白斑が発症しているケースがあるため、遺伝的な要因もあるのではないかと考えられています。
白斑(尋常性白斑)の治療法は?
尋常性白斑の原因は明確には分かっていませんが、自己免疫の異常が主な原因ではないかと現状では考えられています。そのため、治療法としては異常な免疫系を調整・抑制することが必要となります。
以下は日本皮膚科学会が策定した「尋常性白斑のガイドライン」に記載されている治療方法について、大きく4つに分けて説明していきます。
①塗り薬(ステロイドなど)
②光線療法(エキシマライトなど)
③飲み薬(ステロイドなど)
④外科的治療(皮膚移植などの手術)
①塗り薬(ステロイドなど)
尋常性白斑の治療でまず選択される方法が塗り薬によるものです。特にステロイドの塗り薬は、ほぼ全ての症例で選択されるほどの一般的な治療方法です。小さい白斑の場合は数ヶ月をめどに外用を続けて効果があるかを判定します。
これまでの報告によれば、小さい白斑の場合のステロイド外用の効果は半分程度と言われています。ステロイドは塗り続けると塗った部分の皮膚が萎縮するなどの副作用が出てきます。そのため効果がないのに漫然と続けることは避けるべきであり、数ヶ月で効果がない場合は、他の治療方法に切り替える必要があります。
また、広範囲に白斑が出現している場合は、小さい白斑に比べてステロイドの塗り薬の効果が乏しいと言われています。
ステロイドほどの効果は得られない可能性がありますが、他の塗り薬の選択肢としては「ビタミンD3軟こう」「タクロリムス軟こう」があります。
「ビタミンD3軟こう」は、有効性は明らかにはなっていませんが、一定の効果があるという報告も出ています。
加えて、ステロイドやタクロリムス軟こうに比べて、副作用がとても少ないことから選択されるケースもあります。
「タクロリムス軟こう」はある程度の効果が認められています。こちらもステロイドに比べて、皮膚萎縮などの副作用の出現が少ないことも利点として挙げられますが、ステロイドに比べてこれまでの使用経験が少ないことから、長期的に観察した報告がない点が問題点として残ります。
②光線療法(エキシマライトなど)
塗り薬の次に選択されることが多い治療方法は「光線療法」です。
光線療法は紫外線療法とも言われており、ある波長の紫外線を白斑部位にあてることで色素再生を促そうとする治療法です。
紫外線は波長の長い順にUVA、UVB、UVCと分けられており、皮膚科領域で治療に使われる紫外線はUVAとUVBの2種類です。
※以前はUVAを用いたPUVA(プバ)療法という治療が広く行われていましたが、PUVA療法は事前に塗り薬や飲み薬を併用しなければならないことやUVBより効果が低いことがわかったため、現在ではあまり選択されません。
PUVA療法に変わり主流となっている白斑の光線療法はUVBを用いた治療です。UVBは中波長紫外線とも呼ばれており、波長は280-315nmです。UVBを用いた治療方法には大きく2種類あります。
①ナローバンドUVB
ナローバンドUVBは、UVBの波長を狭くしたものです。通常UVBの波長は280-315nmですが、ナローバンドUVBは311±2nmに限定した紫外線治療機器で、通常のUVBに比べて効果は高いとされています。
白斑に色素が再生し、見た目が改善するまでには治療回数が多くかかることがあり、紫外線暴露による皮膚がんの発生リスクが懸念されています。ただし、どのくらいの光線量で何回治療をしたら皮膚がんのリスクが上がるといった、明確な基準は分かっていません。
治療回数の明確な制限はありませんが、トータル60~200回程度は必要であると言われています。ただ、患者ごとの皮膚のタイプや1回あたりの光線量、白斑の部位によってもさまざまであり、一概には定義がされていません。
②エキシマライト
エキシマライトは、UVBの波長の中で、308nmに限定した紫外線治療機器で、ナローバンドUVBよりも新しい治療機器です。
75%以上の色素再生においてナローバンド UVBと比較したところ、ナローバンド UVB 群では6% であったのに対して、エキシマレーザーライト治療器群では37.5% であったとする報告があり、ナローバンドUVBより効果が高いと考えられています。
ただ、紫外線をあてると言う行為は同様なため、皮膚がん発症のリスクはないとは言えませんが、ナローバンドUVBと同様に、どのくらいの光線量で、何回治療をしたら皮膚がんのリスクが上がるかなど、明確なことはわかっていません。
③飲み薬(ステロイドなど)
白斑の飲み薬には「ステロイド」や「免疫抑制剤」があります。
白斑は自己免疫の異常で出現することが考えられているため、異常な免疫状態を是正させるためにステロイドや免疫抑制剤が使用されます。
飲み薬は全身に作用することで、副作用が出現する可能性も高くなることから、治療適応になるケースは限られています。
ステロイドの内服は、進行していく白斑には有効と言われています。
免疫抑制剤は、治療報告がとても少なくガイドラインでも現状では「評価困難」と記載されています。
進行していく広範囲の白斑に対して、十分な知識を持った医師の元でのステロイド内服療法は、一定の効果が得られる可能性はあると言えます。
④外科的治療(皮膚移植などの手術)
白斑に対する外科的治療は、「皮膚移植」が主に行われています。
ただ、まずは上記で説明した塗り薬や光線療法などの治療を1年以上しっかり行う必要があります。このような知慮を行ったにも関わらず改善しない場合で、特に整容的に問題になる白班のみが、外科的治療の適応になるとされています。外科的治療は、実施できる施設は少なく、より専門的な知識が必要になる治療法です。
さいごに
ここまでで尋常性白斑の原因と治療方法について説明しました。
白斑は痛みやかゆみなどの自覚症状は少ないですが、発症する部位によっては人目が気になってしまうことで生活の質を低下し、社会生活に制限が出ることもある疾患です。人口の0.5%~1%程度に出現する比較的ありふれた病気ではありますが、正しい治療方法などはあまり知られていません。
正しい知識を身につけて、正しい治療方法をおこない、適切な経過観察を続けていくことが大切です。